漫画、NHKにようこそ!を読み終えて
私はこの漫画を中学生のころに買った。
確かその時の理由は絵が可愛いだとか、中古で安かったからとかそんな他愛ないことだった気がする。目論見通り中身は少し官能的な表現の混じった電波ギャグマンガだった。話はめちゃくちゃだしキャラの心情なんて1mmも同情しえなかった、その頃の私にとっては。
時は過ぎて20歳の夏、ふとした気まぐれでこの漫画が目に留まった。そして読んでみるとどうだろう。中学生のころには何も理解できなかった登場人物たちの心理描写がすべて心に直接染みわたってくるのだ。
これほどに読者層によって感想が大きく変わる漫画は多くないだろう。レビューを見てみても序盤はギャグが面白いが中盤以降は蛇足との評価が多い。しかし私はこの中盤以降の堕ちに堕ちていく感じが余りに自分に肉薄していて心が揺さぶられた。
確かに主人公の佐藤は同じ間違いを延々と繰り返す。毎回のように荒唐無稽な夢を描いてはすぐに挫折する。その繰り返しが基本だ。普通の人からしたらくどいと感じてしまうかもしれないが私はあまりにも自分に酷似していて目を離すことができなかった。
*勘違いされがちだが我ら無気力人間とて感情が死んでいるわけではない。人並みに夢を見るしむしろプライドが高い分無邪気な夢想を楽しむ。しかしながらやる気が続かない。その繰り返しでいつからか夢を見ることすらめんどくさくなってしまうのが無気力人間だと私は思っている
人とはそう簡単に変わらない。私はそう思っている。
今作の主人公の佐藤だって最後には変われたがその要因は岬ちゃんや先輩のような特殊な周囲の影響(あるいは作品のオチのため)によってようやく変われている。
正直私は悲しくなった。特殊な外的要因がなければコミュニケーション能力も欠如している私がどうして変われようか?作中の主人公のように妄想の中に自分を変えてくれるヒロインを作るのか?はたまた神か
ともあれ幾度の挫折を経ながらも無謀な挑戦をする主人公には少し勇気づけられた。そういえば最近挑戦することすら、できなくなってしまった。